HOHLFORM
Year: 2017 (Date: Sep.17.)
Location: Inubousaki, Chiba
Weather: Typhoon Talim (No.18)
Material: Glass, iron, sterile purified water, LED, sea sand, photo, tin
Dimensions: H370 x W330 x D330 mm

本作は、海の波によってつくられた荒々しくも繊細な錫の彫刻をガラスケースに封入したものです。その他に、ケース内は本作の制作に関わった様々な要素で構成されています。ガラスケースの中には水が満ちており、海砂の上に錫の彫刻が設置されています。刻々と色を変えるLED が、海での制作風景の写真と錫の彫刻を照らし出しています。

港の近くで育った私にとって、海はとても身近な存在であると同時に、水中の不可視領域の広大さに畏れを抱く存在でもありました。ときに自然は災害として私たちの生活を脅かします。また一方で、自然現象が生じさせる造形・風景や体験は、私たちを癒し、心地良くもしてくれます。これは自然を捉える視点や接し方によって、自然というものの有り様が無数に存在することを意味しています。タイトルの《HOHLFORM》とはエストニアの生物学者ユクスキュルからの引用です。ユクスキュルは、私たちはわれわれが自然を征服し、自然と共生していると考えがちだが、そうではないと言います。「生命の知覚に自然世界が押し付けて負の型(hohlform)として型抜きしている。知覚によって対象化された世界は知覚範囲によって左右されるため、われわれが知覚しているものはナマの自然ではない。」と。ユクスキュルの思想からは主体はわれわれではなく自然にあることがわかります。

本作は、台風の接近する犬吠埼の海岸で制作しています。溶かした純錫を迫りくる波に投げ入れ、凝固したものを手で拾い上げました。その光景は、まるで波が錫を削り、押し曲げ、ひねり、彫刻をつくっている様でした。自然は何かをつくりもするし、破壊もします。私たちが自然をコントロールできるようになるにはまだまだ時間が必要でしょう。私は自分も含めて自然によって型抜きされた存在であることを感じるとともに、自然の未だみぬ側面に触れることを通して、自然とともに「つくる」感覚で新しい発見を探っています。

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